ポケットに1円も現金がなくても、外出できるだろうか。3年前ならほとんどの人が斷固「ノー」と答えたと思われる。だが今やバーコード読み取りによる決済、銀聯の閃付(クイックパス)、オンライン決済といった新たな決済方法の登場や銀行カードの全面的に普及によって、多くの中國人が躊躇なく「大丈夫」と答えることが予想される。調查によると、ネットユーザーの70%以上が「現金はもはや生活の必需品ではない」と答えたという。少し前には「支付寶」(アリペイ)が、「中國が5年以內にキャッシュレス社會に入るよう後押しする」と豪語して議論を引き起こした。一體、キャッシュレス社會の実現はどれくらい先のことなのだろうか。北京青年報が伝えた。
▽北京で「キャッシュレス生活」を體験
3月9日、全國人民代表大會の代表で浙江省杭州市のバス運転手を務める虞純さんが、北京でキャッシュレス生活の実地調查を行った。
たとえば攜帯電話で病院の受付が可能だ。虞さんは正午に北京大學第一病院に行き、受付ロビーで事務員に「攜帯電話で受付できますか」とたずねたところ、「予約の受付もできるし、受付料金を払うこともできる」という返事が返ってきた。攜帯で予約受付をして予約した時間に病院に行けばよいということになれば、受付のために長い時間列に並ぶ必要がなくなる。
北京で一番古い街並みでは、店舗の95%以上が非現金決済に対応している。虞さんは北京で最も古い胡同(橫丁)の煙袋斜街を訪れた。そこではほぼすべての店舗が非現金決済を取り入れており、きれいな窓花(花の切り紙)、かわいらしい伝統工蕓のうさぎの置物などが、攜帯をバーコードにかざしただけで手に入る。サンザシ飴を売る屋&でも支付寶での支払いが可能だ。現在、煙袋斜街には100軒近い店があり、キャッシュレス取引に対応するところは95%を超える。
▽中國はクレジットカードを飛び越えてモバイル決済へ
上海大學科技金融研究所の孟添副所長は、「中國のキャッシュレス社會実現の道のりは歐米の先進國とはきっと異なる。海外ではほとんどの人が何枚ものクレジットカードを持ち、そこでのキャッシュレス社會では販売時點情報管理(POS)の端末にカードを読みとらせる形が多用されるが、中國の消費者は攜帯電話によるモバイル決済を明らかに多用している。中國はネット普及率が高く、ネットユーザーが多く、モバイル決済が日點の暮らしに浸透しているからだ。
中國人民銀行(中央銀行)がまとめたデータによると、昨年末現在、中國人の平均クレジットカード保有枚數は0.29枚に低下した。2014年末がピークで0.34枚だった。中國決済清算協會が昨年末に発表した調查結果「2016年モバイル決済ユーザー調查研究報告」によると、回答者の47.5%が「現金やクレジットカードを持ち歩かなくてすむのでモバイル決済を選んだ」と答えたという。
▽中國人消費者の8割がモバイル決済を利用
市場調查會社ニールセンのデータでは、世界規模でみると、モバイルデータ決済がキャッシュレス決済に佔める割合はほぼ半分の43%だ。國別の調查データでは、中國人消費者はモバイル決済を利用・信用するという人が86%に上り、他國を大幅に上回った。
業界関係者の一般的な見方では、モバイル決済が中國で急速に発展した理由は2つある。1つは後発組の優位性で、中國には厚みのあるクレジットカード文化がなかったため、現金決済からモバイル決済へ一気に転換できたということ。もう1つは第三者決済機関が急速に発展拡大し、決済機関の後押しによりオフラインのモバイル決済シーンのカバー範囲が広がっていること。これらが決定的な役割を果たしている。
「支付寶」(アリペイ)の狀況をみると、現在、全國のレストランと商店・スーパー・コンビニの200萬店以上で利用が可能なほか、駐車スペース80萬カ所とガソリンスタンド2萬カ所以上でも二次元コード・バーコード読み取りによる利用が可能だ。このほか支付寶で全國のスポーツ施設など2萬カ所の予約ができ、30省・自治區・直轄市の120都市の観光地で入場券を買うことができ、5萬軒を超えるホテルで支払いをすることができる。
▽中國のモバイル決済にはっきりとした都市・農村格差なし
興味深いのは、これまでのように新しい事物が農村部より都市部でより人気を集めていたのとは異なり、モバイル決済の動きには都市と農村の間に明確な格差はみられない。上記の「報告」によれば、16年は県の行政中心地のモバイル決済ユーザーが最多で19.6%に上り、省都都市は2位の19.0%、農村地區は3位で17.0%、地級市(省と県の中間にある行政単位)は4位で15.8%、直轄市は14.5%、郷鎮エリアは14.2%だった。
支付寶がまとめたデータからもわかるように、モバイル決済の浸透率では、內陸部の西蔵(チベット)自治區が90%で全國トップに立ち、以下、青海省、甘粛省が続き、沿海の省市を大きく上回った。西蔵は12年からモバイル決済の浸透率で首位を保ち、現在では、すべての行政村でモバイル通信システムの100%カバーが実現し、遠隔地の村落や広大な牧草地に暮らす農牧民はモバイル決済で生活必需品を手に入れている。
こうした現象について、対外経済貿易大學金融學院の高潔準教授は、「モバイル決済はクレジットカードのような審查がなく、ハードルが低く、ほぼ誰にでも開放されている。農村の攜帯電話普及率は非常に高く、攜帯が媒介するモバイル決済も一緒に普及してきた。今後はネット金融プラットフォームを利用して、農民のニーズによりよく応える金融商品や資産運用商品を開発することが、農村の金融サービス問題解決の潛在的な方向性でもある」と指摘した。
孟副所長は、「海外でモバイル決済の発展ペースが最も速いのはアフリカや中南米などのエリアだ。発展が遅れた地域は元點インフラが弱く、このため新しい技術や新しい変革を受け入れる際には適応しやすく、飛躍的発展を実現しやすい」と説明する。
▽キャッシュレス社會の実現はどれくらい先のこと?
孟副所長は、「私たちは今、発展成長の段階にあり、啓蒙の段階はすでに過ぎた。特にインターネットをベースとした決済は、ネットユーザーが多いため、すでに(利用者が)7億人を超えた。ネットをベースにした決済は多くのネットユーザーの消費習慣になっている。キャッシュレス方式を決済の主流にすることを目標にするなら、それほど長い時間はかからず、5年か10年で可能だと確信する。だがこの目標の実現には政府が指導を一層強化し、インフラ建設を推進し、革新と規範化とのバランスを取り、産業が健全に発展する環境づくりをし、競爭が秩序をもって行われる産業局面を形成することが必要になる。市場のパワーは巨大だが、金融分野では秩序をより重視しなければならない」と述べた。
(人民網日本語版)
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